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2008年9月

2008年9月27日 (土)

メンフレこぼれ話(その4)

 先回はメンタルフレンドと子どもたち(家族)との関係についてお話ししましたが、メンフレ活動はまた、機関スタッフの皆さんとの関係にも発展していきます。
 ご紹介するT先輩(一期生)も約2年間に渡りA君(特別支援学級所属)とのメンフレ活動を続けました。Tさんは当研究室による導入の後、学級担任・養護教諭との周到な打合せと計画的な役割分担の中でほぼ毎週のように学校訪問を開始しました。「何しに来ているんだ、あの学生は?」といういぶかしげな周囲の視線も、半年後には「いつもご苦労さん!!」という声かけに変わり、A君が中学進学を3ヶ月後に控える頃には「今度の学校でもA君うまくいくといいね」という全教職員(環境システム)による思いの焦点化を引き起こしていたのです。もちろん、その間のA君の変化に大きなものはありません。しかしTさんのひたむきな活動(願い)が、少し大げさに言えば、支援組織に「新しい風」を吹き込み、教職員全体に「希望の回復」をもたらしたのでした。このことは後に大量の里芋(自家菜園)と共に届けられた教頭先生の「学校が変わりました」という言葉によって証明されています(ごちそうさまでした)。
 皆さんのメンタルフレンド活動は単に親子さんにだけでなく、受け入れ機関全体状況にも動きを与えています。一見クローズドな個別関係が実は「利用者」さんのアドボケイト(代弁)を通して広く社会に繋がっているという意味で、このメンタルフレンド活動は単なるボランティア活動を超えた「福祉実践」(地域展開)そのものであると言うことができるのでしょう。
 蛇足ながらメンタルフレンド活動を継続していく中で、毎年何人かの学生さんは卒業研究のテーマにそれを選択なさいます。Tさんもまたご自分の実践活動を作品にまとめられました。そのような「本物」(コピペではない)は出来映え(学術的水準)とは違う次元で私にとって宝物であり、研究室後輩への贈り物になっています。(GP4317)

2008年9月20日 (土)

見えぬもの

 今となってはスマップの代表作の一つとなった「世界に一つだけの花」という歌が久しぶりに流れていました。そこでの有名なフレーズ「ナンバーワンよりオンリーワン」を耳にするたびに「金子みすず」(1903-1929)の「わたしと小鳥とすずと」という詩を思い出します。みすずは、自分には空を飛んだり、体をゆすって綺麗な音を出すことはできないけれど、早く走ったりたくさんの歌を唄うことができる。だから「みんなちがって、みんないい」と言いました。 また、金子は「星とたんぽぽ」という詩のなかでこうも言います。
   ------(中略)---------
   昼のお星は目に見えぬ
   見えぬけれどもあるんだよ
   見えぬものでもあるんだよ

 個性的な少数者の存在をかけがえのないものとして大切にしていこうとする私たちの福祉実践は決して昨日今日の思いつきなどではありません。見えない「もの」、声の小さい「もの」の内にこそ真実が存在することを,とうの昔に金子は私たちに教えてくれています。
 というわけで、近く予想される総選挙に出馬予定の諸先生におかれましても「見えぬもの」(選挙民)の存在を肝に銘じて取り組みいただければと切にお願い申し上げる次第でございます。って言うか、誰もここのブログなんぞご覧になってない?! 失礼いたしました。(GP4317)

2008年9月13日 (土)

学生自慢

H19 夏期合宿(寺泊海岸)
 今回は我が研究室卒業生についての単なる自慢話です。
 早いもので私の研究室も本年3月に第5期生を送り出し、現在指導中のゼミ生(9名)は第6期になります。そんな中で当研究室ではこれまでに5名の方が大学院(旧国立3名、私立2名)へ進学して教職や福祉エキスパートを目指して頑張っておられますが、今年もまた嬉しい報告(旧国立合格)が届き、本日現在6名の大学院生となりました。
 便りのご本人は3期生のお嬢さんで、障害者施設で経験を積み上げながら進学準備(メンフレ経験からスクールソーシャルワーク志望)を進めてこられました。微力ながら当研究室でも受験対策や大学院での「研究計画書」作りのお手伝いをさせていただいて来ています。(もちろん入学はご本人の努力以外の何ものでもありません)
 最近は文科省でも大学による「社会人の学び直し」を強調していますが、現場で培われた課題意識と学びへの新たな意欲の醸成に後押しされた実践の理論化(進学)を私もまた重要で価値あるものと考える者の一人です。その意味で、私は「迷った時に帰るべきところ」とは別に,ライフステージを見通した「自分つくりの作戦基地」としての研究室(居場所)でもありたいと希望しています。在校生企画で多数の先輩を迎えて毎年開催される「卒論中間報告会・夏期合宿」(本年度は9/14・15参加30名予定)もまたそのための主要な仕掛けの一つになっているわけです。
 もちろん、就職のための「社会福祉士」資格も大切ですが、新潟青陵大学の持つ「学究の徒」養成の可能性と底力を皆さんの先輩が雄弁に証明してくれています。専門校全盛の本県において本学の「骨太な教育力」こそ、今,再確認すべきではないでしょうか。
 とは言うものの、今年はあと一人の合否報告を「親バカ」丸出しでハラハラしながら待っている「父親モード全開」のメタボ・オジサンではあります。合格したら美味しいお弁当を用意して待っているから皆んな頑張れ。(GP4317)

2008年9月 6日 (土)

メンフレこぼれ話(その3)

 児童相談所におけるメンタルフレンド活動の一つに「家庭訪問」という支援形態があります。もちろん,最初は児相スタッフによる訪問活動への同行から始まりますが,何回かの同行訪問の後,お子さんとの関係つくりに成功するとメンフレさんによる単独訪問へと発展していきます。
 そのようなケースの中に心に残る先輩メンフレさんのことを思い出します。彼女が関わったK君は小学校からの不登校傾向を引きずったまま,中学入学後も登校できていないという男子生徒でした。彼女は過密な大学講義の合間を縫って月に何回も精力的にK君宅へ通い続けましたが,変化のない状態に「私のメンフレ活動は意味があるのかしら」と悩む日々が1年以上続いたのです。一方,彼女と母親との関係は深まり,ケース終盤には母親への心理支援がK君へのそれと同等以上に重いものとなっていました。
 そして,それは県北の医療機関で精神保健福祉士として働く,今の彼女との関係にまで続いています。K君ゆかりの駅前喫茶店でお母さんとお話ししてきたという彼女からの報告は「あなた(メンフレさん)のおかげで私たち親子は,当時,どれだけ救われたかわかりません」「うちの子にとってあなたの家庭訪問だけが唯一の家族以外の人間関係でした」というものでした。
 皆さんのメンタルフレンド活動は目の前の子どもたち一人一人だけでなく,直接・間接的にその御家族(家族システム)全体への関わりでもあることを改めて学ばせていただいたケースと言えましょう。もちろん,大学での講義以上に「大きくて深いもの」(卒後の職業選択にまで)をメンタルフレンドの「実践活動」から学ばせていただいた彼女もまた「ケースに感謝」ということになるわけです。(GP4317)