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2011年10月

2011年10月12日 (水)

青空祭を前にして -東日本大震災の年に-

 私たちの学舎は、春夏秋冬、四季折々にほんとうに素晴らしい自然のたたずまいに取り囲まれております。表情豊かな日本海の景観は、私たちに多くの感動を与えてくれます。ことに春と秋は格別です。春は桜のはかない白色が、秋には楓の葉の燃えるような紅葉が、季節を彩り、雪国新潟でも一年で最も美しい季節となります。

 今年も長く暑い夏が終わると、秋祭りの季節がやってきました。日本海を越えてくる涼風とともに青陵学園にも「青空祭」という学園祭の季節がやってきました。地方の秋祭りはほんらい収穫を寿ぐ祝祭です。しかし今秋は3月11日の東日本大震災発生からようやく半年過ぎたばかりで、祝ってばかりはおられません。地震、大津波、原発災害の連鎖的発生で、被災地のみならず日本列島の各地に深刻な影響が起きたうえに、災害からの復興は遅々として進まないことは、皆さんも承知のことでしょう。私はこの間「この大災害について目をそらすことではなく、現実を凝視すること」の必要性をたえず学生諸君に訴えてきました。災害を「記憶する」ということが次なる災害を回避する重要な手だてとなると考えるからです。

 7月になってから青陵大学・短大としてはかつてない規模で、三陸海岸に位置する陸前高田市に教職員と学生とが一体となった被災地支援のボランティアを派遣することを決めました。陸前高田市がより深刻な被災地であったことや新潟市の社会福祉協議会の職員が常駐している関係もありました。夏休み中に合計10回のバス移送で、全教職員の約5割、全学生の約2割が2泊3日の被災地のがれき整理や塵埃収集に参加しました。当初はその効果や作業の安全性をめぐって異論もありましたが、実際に被災地を体験してほしいという現地の方々の声にも励まされ、支援活動は実行されました。参加した学生諸君は何かを胸に刻み込んだことと確信します。

 たとえ明るく楽しくあるべき青空祭であろうとも、こうした今回の震災について学生なりの目線で、冷静に誠実に分析し、考える企画を是非付け加えていただきたいと考えます。たとえばボランティア活動に参加した学生の記録を発表することなども良いかと思います。毎年青空祭には数多くの学生がひたむきに取り組んでいる一方で、まるで無関心の学生も多いようです。学生全員が参加し、その絆をいつも感じるような学園祭にしたいものです。その上で地域の方々や卒業生の方々との絆が強まることを期待してやみません。むろん祭は楽しく、三好達治作詞、中田義直作曲の素晴らしい学園歌にあるように「若き日の二つなき日」の青春の情熱をこの青陵のキャンパス中にたぎらしてください。

※この文は青空祭のパンフに寄稿したものですが、若干修正してダイアリーに掲載します。

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