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2016年2月

2016年2月18日 (木)

本の香り (3) 教養としてのミステリー読書が好きでないあなたへー

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 丸谷才一という作家に『快楽としてのミステリー』(ちくま文庫)という本があります。ミステリーを巡る評論・エッセイ・書評を編集したものです。丸谷の書評のすべてが天下一品、面白くかつ奥が深いのです。丸谷にはこの他に『快楽としての読書 日本篇』『快楽としての読書 海外篇』といった読書論の2冊がありますが、今日のおすすめはミステリー限定のこの一冊です。19~20世紀における欧米の推理小説の山脈を俯瞰する格好のガイドブックにもなっています。例えば「ホームズ学の諸問題」という一章を読めば、コナン・ドイル原作シリーズ「ホームズの事件簿」を読みたくなること請け合いです。

 ミステリー(Mystery)の本来の意味は「神秘」「秘密」ですが、ミステリー・ストーリー(Mystery story)となると「推理小説」「怪奇小説」「探偵小説」と訳され、現在ではミステリーといえば推理小説を意味します。コナン・ドイルの小説にはシャーロックホームズ、アガサ・クリスティにはポアロ、さらにはレイモンド・チャンドラーにはマーローという名探偵が登場し謎を解いて行きます。従って探偵小説といういい方も納得できます。最近では探偵が主役でなくなり、それに代わってベック警部とか、モース警部といった刑事らが活躍することになり、警察小説といってもよいようです。これらのミステリーは近代都市やその市民なしにはありえず、その意味で推理を楽しみながら社会背景を知ることができます。またミステリーは論理的思考力を養うことにも役に立ちます。面白い本を見つけて、読書嫌いを克服しましょう。それにはミステリーが一番。

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