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2008年7月17日 (木)

教育と”志し”

図らずも女子短期大学長をお受けしてから十五年、教育の在り方と学園の経営に心血を注いできた積りですが、辿り着いた今の心境は、『教育とは感動(通俗にはinsentive)をもって“志し”を後代に引き継ぐ。』こと、そのような教育を本学園で体現したいことです。

“志し”が古めかしいと言うならば高次の“想い”ないし“目的意識”と言い換えても良いでしょう。“志し”の有無は巧言麗句には依りません。その人の行動、態度によって示され、自ずから後進、周辺(生徒、学生)を感化するものなのです。

わたし自身の経験では旧制中学時代の二人の教師が特に印象深く残っています。お一人は『子曰(しのたまわく)』時代の漢文の教師で、生徒の理解には関知せずに「論語」や「日本外史」を素読される、その陶酔のお姿に感銘を深くしたものでした。もう一人の先生はその先生が臨時に担当する世界地理のテストに手を抜いた私を滂沱たる涙とともに叱咤激励されました。小生意気な生徒であった私への“想い”は私の生涯を通じて心底に妖しい光を放ち続けています。前者は学問への情熱であり、後者は教え子の進路に賭ける情熱であってその方向を全く異にし、両先生の風貌も当時のお歳も天地の差異がありますが、受けた感動が私という次代に受け継がれたことに違いはありません。

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