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2009年7月

2009年7月23日 (木)

現代GP研修「平成21年度公開オープンカレッジ」報告

新潟青陵大学現代GP特別研究員の鈴木です。

 去る7月11日土曜日に、平成21年度公開オープンカレッジ「『生きること』を考える~どう生きるのか、生ききるのか~」が開催された。この講座は、文部科学省「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」の一環として行う公開講座である。医療と教育の現場で活躍している4人の方々をシンポジストとしてお迎えし、それぞれの現場での経験から、いかに「生を輝かせるのか」いかに「生ききるのか」をお話しいただいた。

 シンポジストは、浅見恵子氏(新潟県立がんセンター新潟病院)、多賀裕美氏(長岡西病院 ビハーラ病棟)、橋本定男氏(上越教育大学大学院)、中川泉氏(新潟青陵大学)である。企画された斉藤まさ子先生のオリエンテーション、現代GP取組責任者の押木泉先生の挨拶のあと、池田かよ子先生の司会で進行した。

 知らなかったこと、初めて知ったことが沢山あった。たとえば
 

 30年ほど前には小児がん患者は5人に1人しか助からなかったが、今では5人のうち4人が助かるようになった。使用している薬剤はほとんど変わらないのに治癒率がこれほど上昇したのはなぜ?
 場面緘黙症注1の2人の小学生が職場体験で初めて行った保育園で声を出して挨拶できた。それはなぜ? どんな状況で?

の答えは、完成度の高い無菌室(NASAの宇宙開発技術発展の中で無菌室についても大きく進歩したとのこと)と、輸血用血液供給システムの完備。(宇宙開発イコール軍事利用と、いい感じを持っていなかったのがこのことだけで見直す気になりました。)

は、特別活動という場の力。保育園児と保育士の素直さと期待に背を押され何年来の緘黙が打ち破られたもの。(こういう力も秘めているということ。かかわりの大切さ)

 

 他にも印象に残る言葉や、覚えておきたいことが次々に語られた。死と生という重いテーマを語るシンポジウムであったが、現場の今や、状況を伝えたくて来たというシンポジストの意気込みもあって、決して暗い内容ではなかった。
 多賀先生の、死に装束に友人手作りのウェディングドレスを着て逝かれた事例や、浅見先生の「それでも5人に一人は頑張りながらも亡くなってしまう」という言葉に涙が滲んだりしたが、死とは生と表裏一体であり人は生きてきたように死ぬということと、死を迎える最後の日までよりよき生を目指そうとの前向きさ、力強さをどの先生も伝えておられたように思う。

 子どもたちの、周囲との関わりの中での生の輝きを語られた橋本先生と、老年期の生き方と介護を受けながらの生を語られた中川先生がともに「居場所」という言葉をキーワードに使われていたのも印象的で、「仲間」「ともに生きる人々」の大切さを改めて感じた。

 公開講座であり、一般市民の方も大勢来ておられた。新潟近郊のみでなく中越上越から来られた方もあった。質疑も多く時間が足りないほどであり誰にとっても関心あるテーマであったと思う。本学学生、メンタルフレンドにもぜひ聞いてほしかったが、土曜ということもあってか、少なめだったのが残念。(いい話でしたよ。またこんな機会があったら聞きましょう。そしていろいろ話ができたらいいですね。)

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講演の様子 質疑応答

 

<注1> 面緘黙症(ばめんかんもくしょう)とは、家庭などでは何の問題もなく話すことができるのに、社会不安(社会的状況における不安)のために、学校や幼稚園といったある特定の場面、状況では全く話すことができなくなる現象を言う。幼児期に発症するケースが多い。
『ウィキペディア(Wikipedia)』より